皆さん、確定申告は完了されましたか?
今年はコロナの影響で通常より1カ月猶予があり、4月15日(木)が締め切りとなっておりますのでご注意くださいね。

さて、今回は確定申告業務でたくさん目にされた領収書の保存期間についてのお話です。

法人、個人を問わず、事業を行っていると日々たくさんの領収書を受け取る機会があると思います。領収書は作業が細かくなり管理が煩雑になりがちですが、重要な書類ですので保存期間等をきちんと守るようご注意ください。

領収書の保管期間

さて、領収書は法律上、どれくらいの期間保管が求められているのでしょうか。
実は領収書の保管期間に関しては、所得税法、法人税法、消費税法の3つの法律に横断的に規定されていて、制度が非常に複雑です。今回は法人と個人事業主に分けて整理していきましょう。

法人の領収書の保管期間は7年

法人の領収書の保管期間は法人税法に定められており、原則、事業年度の確定申告提出期限翌日から7年間保存することとされています。確定申告提出期限は原則として事業年度末から2か月後。領収書の日付から起算して計算するわけではない点に注意してください

(例)決算日が2021年3月31日の事業年度に関する領収書の場合

・法人税申告期限:2021年5月31日  ※原則、事業年度末から2か月後

・領収書保管期間:2028年5月31日まで

※法人税申告期限の翌日から7年間の保存が要請されている

参考までですが、2004年の法律改正前は大法人と中小法人とで保管期間の取り扱いが異なり、大法人は7年間、中小法人は5年間となっていました。しかし改正後は、全ての法人が領収書を7年間にわたり保存することとなりました。

なお、会社が継続して事業運営している限り、領収書の保管量は毎年増えていきます。保管期間を領収書のファイルに記載しておき、保管期間が過ぎたものは徐々に廃棄をしていくことも大切です。

個人の領収書の保管期間は5年もしくは7年

一方、個人事業主の領収書の保管期間は所得税法に定められており、白色申告を行う事業主と青色申告を行う事業主で取り扱いが異なります。

白色申告の場合:原則5年の保管

青色申告の場合:原則7年の保管

ただし例外として、前々年の所得が300万円以下の場合は、白色申告と同様に5年の保管で良いこととされています。

保管期間のルールや注意点

◆仕入れ税額控除を受けている場合

仕入れ税額控除とは、消費税法の概念です。納付する消費税額の計算にあたり、売上の消費税額から仕入れの消費税額を控除して、消費税の納付額を計算する制度となります。これは仕入れや流通の段階で、消費税を何重にも課税されるのを防ぐために存在するものです。

この消費税の仕入れ税額控除を適用する場合(消費税の課税事業者の場合)、白色申告か青色申告かに関わらず7年の領収書保管が求められることに注意しましょう。先述の通り、白色申告や一部の青色申告では、領収書の保管期間が原則5年となっています。しかし、保存期間の長い法律が優先されるため、仕入れ税額控除を受けている場合は7年の領収書保管が必要なのです。

◆赤字で決算を迎えた場合

赤字で決算を迎え、税務上で繰越欠損金がある会社については、9年〜10年の保管期間が求められています。要件を下記にまとめましたので、あらかじめ確認しておきましょう。

平成20年4月1日以後に終了した欠損金の生じた事業年度:9年間保存

平成30年4月1日以後に開始する欠損金の生ずる事業年度:10年間保存

繰越欠損金は、赤字を翌年度以降に持ち越して、将来の法人税納税額を圧縮できる制度です。欠損金の繰越控除が9年間(10年間)認められるため、請求書や領収書も同期間保存しておかなくてはいけないという趣旨になります。繰越欠損金制度の適用を受けるため、領収書はしっかり保存しておきましょう。

なお、繰越欠損金制度の適用を受けるためには、青色申告を用いて確定申告を行う必要がある点も注意してください。

◆電子取引の場合

電子取引を行った際に、領収書の扱いはどうなるのでしょうか。ここで言う電子取引とは、インターネット上などで商品を購入し、領収書をメール添付で発行された場合などを示します。紙の領収書が発行されない取引と考えると理解しやすいでしょう。

電子取引を行った際の領収書の取り扱いは、電子帳簿保存法で定められており、原則、受領した電磁的方法(データ)で保管すれば差し支えありません。また、例外として紙に印刷し、保管することも認められています。また、保管期間は紙の領収書と同様です。

実務上では、領収書を紙で受領するケースと電子データで受領するケースが混在しているでしょう。最近ではペーパーレス化の流れから、後者の受領方法が多いかもしれません。その場合、後から全ての領収書にアクセスしやすいよう、会計帳簿の取引番号を紙と電子データにそれぞれ紐づけておくと良いでしょう。

もしくは、電子データで領収書を受け取ったとしても、印刷して紙で受領した領収書とまとめて保存しておくのも一つの方法です。

経理書類別の保管期間

ここまで、領収書の保管期間についてご紹介してきました。ただし、経理が扱う書類は領収書以外にもたくさんあります。ここで、他の書類についても保管期間を整理してみましょう。

【保管期間5年】

会計監査報告、監査報告書など

【保管期間7年】

会計帳簿(総勘定元帳、現金出納帳、売上帳など)、現金収受や預貯金の取引で作成された取引証憑書類(領収書、通帳など)など

【保管期間10年】

決算書(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)など

保管期間は会社法や法人税法、消費税法など、数多くの法律によって横断的に定められています。自社が取り扱っている文書を整理してチェックリストを作っておくと、保管期間の漏れがなくなるはずです。税務署による税務調査が入ると必ずチェックされる文書ばかりですので、保管には十分に気を付けましょう。

領収書の保管・管理は、地味な作業に思われるかもしれませんが、各種法律で要請されている重要な作業です。後々になって税務調査などで問題にならないよう、日々領収書を整理し、法律で定められている期間はきちんと保管するようにしてください。

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