昨年はコロナ危機という歴史的な出来事がありました。

国内外の経済は大きなダメージを受けましたが、当面のパニック的な混乱は回避され、本年は政府の経済対策や東京オリンピックの波及効果が期待されるなど、実質GDPの成長率はプラスに転じると予想されているそうです。

GDP(国内総生産)の約6割を占めている個人消費をみると、緊急事態宣言が発令された去年4月時点では、一時、国内消費は6割落ち込みましたが、その後、現在は1割減という状況までに徐々に回復しているようです。

現在は、初期と比べると感染に対する恐怖感が軽減され、極端に外出を控え個人消費が丸ごと消滅してしまうような事態は解消されています。悲観的な材料ばかりが目に留まりますが、実際には景気回復に向けた好材料が多く存在するのも事実です。

現時点では大都市圏を中心に建設需要が比較的高いほか、5G通信など新技術の本格的な普及により情報通信産業などではプラス成長が見込まれています。

また、在宅勤務の進展に伴い、通販サービスをはじめ、家の中での生活や仕事を充実させる商品やサービスなど、これを機に在宅関連の事業を開始した企業も増えています。

延期されていた東京オリンピックも今年は開催される予定で、これにより約2兆円の需要が発生すると推計されています。昨年はインバウンド需要が大きく落ち込みました。例えば、2019年3月のデータを比較すると、新型コロナの影響で訪日外客数は9割ほど減少してしまいました。

東京オリンピックが開催されるとインバウンド需要の増加に弾みがつくのは確実で、直接的な効果だけではなく、交通インフラの整備やマーケティング活動費、スポーツ振興、耐震化、バリアフリー化などを勘案すれば、GDPの押し上げ効果は20~30兆円という報告もあるようです。

コロナ危機前には、対面会議や出張は当然のことでありましたが、今はより多くの企業がプロセスのスリム化、デジタル化へシフトしています。在宅勤務やリモートワークも、その変化のひとつです。

デジタル化に関しては、日本企業はこれまで海外と比較して周回遅れとも評価されてきました。新型コロナの感染拡大を契機に在宅勤務の導入が広がったことなどで、デジタル技術を活用した新たな製品やサービスの開発が進み、経済活動に変化の兆しが現れています。

新型コロナをビジネスの好材料と捉えるベンチャー企業の割合が増加しています。もちろん、大きなダメージを受けた企業は存在するものの、新型コロナによる経済状況の変化をきっかけとして、新たな顧客や取引先を開拓できている中小企業も多いとみられています。

当面、経済を取り巻く環境は依然厳しいと言わざるを得ない状況ではありますが、景気後退は常に続くわけではないため、現在取り組むべき課題を着実に実行し、景気回復に移ったタイミングで素早く動けるよう、万全の体制を整えておくことが重要となります。

コスト削減は資金調達と同じく重要な課題です。大きなコストとしては売上原価や人件費などが挙げられますが、これらのコストは売上にも直結するため、大幅な削減は現実的ではありません。どのような企業にも削減できるコストは存在しますが、その削減できる部分を見極める必要があります。

そして、経済の転換期を意識することも大切です。景気回復後にスタートダッシュを決められる体制を常に準備しておくことが今後の大きな成長にも繋がると考えられます。