独立すると会社員時代とは多くの面で異なります。そのうちの一つとして社会保険があります。弊社の創業相談でもよくご質問いただきますのでまとめておきたいと思います。
会社に勤務していると毎月給料があり、その給料から健康保険料や介護保険料(40歳以上65歳未満)、厚生年金保険料、雇用保険料などの保険料が控除されていたと思います。
そもそも社会保険料とは何でしょうか。
社会保険料というと、健康保険と厚生年金保険をイメージされると思いますが、広い意味でいうと労災保険と雇用保険、さらに国民年金や国民健康保険料なども社会保険に含まれます。社会保険とは病気やケガ、失業や労働災害、介護や死亡などの危険に備えて国民が保険料を負担し合ってみんなで助け合う制度であり、労働保険や国民年金、国民健康保険も含まれますが、この記事では社会保険と記載している場合は健康保険と厚生年金のことを指し、健康保険は全国健康保険協会(協立けんぽ)の健康保険のことと思って読み進めてください。
◆退職して独立するまで
お勤めの会社を退職すると、当然ですが現在加入している社会保険から抜けることになります。では、退職して事業を開始するまでの間の社会保険はどうなるのでしょうか。
まず健康保険ですが、以下3つの選択肢があります。
①会社で加入していた健康保険に継続して加入する(任意継続で期限は2年)
②ご家族が加入している健康保険の扶養に入る
③国民健康保険に入る
この3つの中で保険料のことを考えると②を選択できる方は②が一番お得ではないかと思います。
年金については国民年金に加入することになりますが、健康保険の①及び③の場合は第1号被保険者となり、②の場合で配偶者の扶養に入る場合は第3号被保険者、その他のご家族の扶養に入る場合は第1号被保険者となります。
◆独立後
起業したあとの社会保険については、個人事業として独立する場合と法人の代表取締役になる場合で異なります。
まず個人事業主の場合は自分自身が社会保険に加入することはできません。この場合、健康保険は独立する前と同じ選択となります。ただし事業を始めて一定の収入を得るようになるとご家族の扶養に入ることはできなくなります。法人(株式・合同など)の代表となる場合は、会社から報酬を受け取り社会保険に加入することとなります。(強制加入)
◆労働保険について
労働保険は労働者(職業の種類を問わず事業に使用される者で賃金を支払われる者)つまり従業員が対象となりますので、個人事業として独立した場合でも法人の代表になる場合でも、いずれの場合も加入することはできません。
※令和6年11月1日から、企業等から業務委託を受けているフリーランスの方(特定フリーランス事業)について業種・職種を問わず特別加入することができるようになりました。労災保険に特別加入することにより、仕事中や通勤中のケガや病気、死亡に対して、補償を受けられます
令和6年11月1日から「フリーランス」が労災保険の「特別加入」の対象となりました|厚生労働省
失業保険はどうなる?
会社を辞めると失業保険を受けることができます。ただし自己都合による退職となり、7日間の待機の後3カ月の給与制限があります。
退職して起業した場合、失業保険はもらえるのか?という質問をよくいただきますが、答えはノーです。失業保険を受けるには当然ながら失業状態でなければなりません。ここでの失業というのは①就職しようとする積極的な意思がある②いつでも就職できる能力がある③ハローワークで求職の申し込みをしている④就職に向けて努力をしているが就職でいない
こういった状態を指します。自ら事業を始めた方は上記に該当しないため失業保険を受給することができません。もし不正受給が発覚した場合は厳しい処分があるそうです。
会社員の頃とは全く異なりますので、開業・起業される前にこういった点も念頭に入れて進めていくようにしてくださいね!